東京都のりょうこさん(30)は6月から、都内のデリバリーヘルス店で働くようになった。男性客の元に
出掛けて性的なサービスを行い、週3~4日、1日9時間の出勤で収入は20万円ほどだ。
事務職の契約社員として3年間働いてきたが、3月に契約が満了になったのがきっかけ。大学を卒業後
アルバイトや派遣、契約社員で事務や経理の仕 事に携わったが、あまり好きにはなれなかった。
「どうせなら、興味のある翻訳の仕事をしてみたくて」。勉強に割ける時間と望む収入を両立できる仕事を
考え ると、短時間で高収入が得られる性風俗業が選択肢に残った。
仕事には特に抵抗感なく入ったが、想定したほどは稼げていないという。接客時間が短くて料金も安い
「激安店」でも掛け持ちで働いてみたが、客の数は多い半面、性病のリスクが高くなることなどもあって敬遠した。
「いろんな店を見た方が良い」という同業の女性からの勧めもあり、所属先は2カ月で3店舗目だ。都心から
郊外の店へ移り、仕事が少し増えた。自由のきくシフトはやはり魅力。希望の職が見つかっても「副業として
続けられたら」と考えるようになった。
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現役の学生もいる。大阪府内の大学に通いながら、1年ほど前から性風俗店で働くまみさん(21)もその1人。
週3回ほどの出勤で、学生ながら多い月は40万円以上を稼ぐこともある。
金銭的に困ってはいないものの、大阪市内の繁華街でスカウトに声を掛けられ、なんとなく働き始めた。大学
にも、性風俗業で働く友人が1人いる。
業界で働き始めてから、いろんな女性に会ってきた。ドメスティックバイオレンス(DV)や貧困、生きづらさなど
の問題を抱えながらも、職業が知ら れることを恐れて声を上げられない女性が多いことも知った。だから「この仕事を
してなかったら、薄っぺらい人生だったかも」と思うことがある。仕事はあま り好きではないが、今は辞め時を考えずに
続けるつもりでいるという。
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自身も性風俗業に携わり、業界で働く女性の支援団体の活動にも加わる関西地方の専門学校生ata(あた)さん(27)は
「若者の間で手軽に働け るイメージが広がっているのでは」とみる。スマートフォンで高収入求人サイトに気軽にアクセス
できるなど、性風俗業の情報が女性に届きやすくなった側面も ある。
一方で、育った環境などが理由で人間関係をうまく築くのが苦手で、「サービスを通して認めてもらえる」と自己肯定感を
求める女性も少なからずいる。また30~40代が中心に在籍する性風俗店では、女性のほとんどがシングルマザーという。
性の意識の変化、自己の承認欲求、生活の困窮…。働く人が増えて競争が激化する背景には、さまざまな要因が複合的
に絡み合っていると感じている。 ただ、こうも思う。「この仕事があってぎりぎりのところで生きられた人もいる。性風俗業に
ついて考えるとき、『悪い仕事』と簡単に批判するだけでなく、そ うした人たちの存在にも気づいてほしい」
2回目の投稿になります 上野です